ダブルスキンファサードの省エネ効果検証「D-Project」

目次

D-Projectの概要

D-Projectとは?
地球温暖化防止に貢献する技術を開発するため、2006年に始動した社内プロジェクトです。
このプロジェクトは、「自社ビルのCO₂排出量を80%以上削減する」という野心的な目標のもと、茨城大学工学部との共同研究として実施されました。
ペリメータレス工法と呼ばれるダブルスキン技術を活用した改修により、目標を超える削減効果を実現し、環境負荷を大幅に低減しました。

 

D-Projectを行った建物のBefore&After画像 D-Projectを行った建物のBefore&After画像

ダブルスキン改修の概要図

下図に示すように、既存建物の外側に新たなガラスパネルを設けることで外皮を2重化し、ダブルスキンファサードを構築しました。

新設したガラスパネルはセラミックプリントを施した合わせガラスとし、既存建物の窓はLow-E複層ガラスに変更しました。

  図: ダブルスキンシステムと太陽光パネルを既存建物に取り付けた図面

ダブルスキンシステムの仕組み

夏(左図)
日射熱をキャビティ内に閉じ込め、室内への熱の侵入を抑えます。本システムでは、キャビティ内の空気を換気できる装置を備え、適切なタイミングで開放できる機能を備えています。
この機能により、キャビティ内の熱を外に逃がし、日射遮へい効果を高めます。

冬(右図)

日射熱をキャビティ内に蓄え、内部温度を上昇させます。内部温度が室内より高くなると、室内の熱損失を抑えます。
本システムは、キャビティの温度が大幅に上昇した際にその熱を室内に取り込む装置を搭載し、より効率的に日射を活用します。
この仕組みにより、エネルギー消費を抑えつつ、快適な室内環境を維持します。

 

  

 

図: ダブルスキンシステムと太陽光パネルを既存建物に取り付けた図面

検証結果① 空調設備の消費電力削減効果

このグラフは、ダブルスキン改装前(2006〜2008年)と改装後(2010〜2012年)の空調設備の消費電力平均を比較したものです。
夏季・冬季には特に大きな効果が見られ、ピーク時の電力消費が約50〜70%削減しました。夏は日射遮へい、冬は蓄熱効果で冷暖房負荷が軽減されたためです。
ダブルスキン導入により、年間を通じて空調設備の電力を大幅に削減しました。

図: 空調設備の消費電力 Before(改装前)& After(改装後)の実績値 比較表(空調低電圧200V)

 

検証結果② CO₂排出量削減効果

この棒グラフは、「ダブルスキンによる省エネ効果」と「太陽光パネルによる創エネ効果」によるCO₂排出量の削減効果を示したものです。
ダブルスキン改装前(2006〜2008年平均)と比較し、2010年以降、毎年90%前後のCO₂排出量削減を達成。これはNearly ZEBに相当します。
削減内訳は、省エネ70〜76%創エネ14〜18%外皮強化が消費エネルギーの大幅削減に貢献することが分かりました。

※ CO₂排出量の計算方法: 電気料金明細に記載の200V電力使用量 × CO₂排出量係数0.555kg-CO₂/kWh

図: ダブルスキン、太陽光パネルの導入後、10年間にわたりCO2排出量の削減率75%以上を維持して、ZEB評価『Nearly ZEB』を達成しているグラフ

 

図: ダブルスキン、太陽光パネルの導入後、10年間にわたりCO2排出量の削減率75%以上を維持して、ZEB評価『Nearly ZEB』を達成しているグラフ

【ZEB評価とは?】

省エネルギー・創エネルギーのゼロエネルギー達成状況に応じて、下記のように段階ごとにZEBシリーズが定義されています。

図: 達成状況に応じたシリーズ毎のZEB評価

出典:環境省HP「ZEBとは?」に掲載画像を加工して作成

環境省が説明をしている「ZEBの定義」のページはこちらから

 

D-Projectから開発された「インナーガラスユニット トロポス」

改修では、ダブルスキン技術を応用し、独自システムを導入することで、省エネ性と快適性を向上させました。その結果、CO₂排出量を最大94%削減し、Nearly ZEBレベルの省エネ性能を実現しました。
また、外皮性能の強化が、省エネ効果を高める重要な要素であることが分かりました。
しかし、既存建物への導入には法規やコストの課題があり、導入は容易ではありません。
そこで、建物全体を改修するのではなく、窓部分だけでダブルスキンと同等の効果を得る方法を模索しました。

そこで開発されたのがインナーガラスユニット トロポスです。
「高性能・省資源で、すっきりとしたデザイン」「施工時の省力化・短工期」を両立する製品として開発しました。
現在、この技術をグリーンフロア事業の中心サービスとして提供しています。

図: 達成状況に応じたシリーズ毎のZEB評価

まとめ

D-Projectの概要

      • 地球温暖化防止に貢献する技術を開発するため、2006年に始動した社内プロジェクト
      • 茨城大学工学部と共同研究し、自社ビルのCO₂排出量80%以上削減することを目標に実施。
      • ペリメータレス工法(ダブルスキン技術)を活用した改修により、目標を超える削減効果を実現。

改修による成果

      • ダブルスキン技術+独自システム導入で、省エネ性と快適性を向上
      • CO₂排出量最大94%削減し、Nearly ZEBレベルの省エネ性能を達成。
      • 外皮性能の強化が、省エネ効果を高める重要な要素であることを確認。

「インナーガラスユニット トロポス」の開発

      • 窓部分に適用できる新技術として「インナーガラスユニット トロポス」を開発。
      • 「高性能・省資源で、すっきりとしたデザイン」「施工時の省力化・短工期」を両立。
      • 現在、「グリーンフロア事業」の中心サービスとして提供中。