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ソリューション事例

ガラス庇「キトラ」の技術:風圧力編

ガラス庇の先駆けとして2001 年に発売を開始した「キトラ」は、おかげさまで累計出荷台数10,000 台を超えました。シンプルなデザインのキトラには、お客様に安全・安心してご使用頂くための工夫が施されています。ここでは、キトラ開発における技術レポートの内容から「風圧力に対するガラス庇の安全性」について抜粋・再構成した内容をご紹介します。

この技術レポートは、2003 年よりホームページ上にPDF で発表したものです。

風圧力の算出

台風などの強風に対して安全な庇を設計するためには、まず基準となる風圧力を設定する必要があります(=設計風圧力)。しかし、庇に対する風圧力の定義は、建築基準法や告示等に明記がありません。そこでキトラに作用する風圧力を、建物の外装材に作用するものと同等と考え、建設省告示第1458 号に基づいて算出、製品開発に適用しました。

風圧力が作用したときのガラス庇の挙動

  • 上方からの風が吹いた場合

    全体に下向きの力が働き、吊り材の根元には引抜力、
    庇の根元には圧縮力が発生します。

  • 下方からの風が吹いた場合(吹上げ)

    全体に上向きの力が働き、吊り材の根元には圧縮力、
    庇の根元には引抜力が発生します。

計算例

キトラ(W2,000mm、D928mm)に設計風圧力1373N/m2(140kgf/m2)が作用したとき、庇の根元には下図のように2849N(290kgf)という大きな引抜力が生じます。

この引抜力に耐えられず、枠材から庇が抜け落ちてしまった場合、右図のような重大事故を引き起こす可能性が考えられます。

そのため、風圧力が作用したときに生じる引抜力に対して十分に耐えうる接合方法の設計が不可欠です。

( この解決方法については「引抜力に対する安全設計」へ )

また、風圧力によってガラス自体が破壊されないように、十分な強度を持つガラス構成を検討することも重要です。下図のような風圧力を受け、たわみが生じているガラスでは、上面で圧縮応力、下面で引張応力が生じています。このとき発生した引張応力が許容値を超えるとガラスは破損してしまいます(キトラは強化合わせガラスであり、その許容応力は79N/m m2です)。特にキトラのようなDPG 構法(Dot Pointed Glazing)で支持されたガラス面では、支持点まわりにより大きな応力が発生するので、詳細な検討が必要となります。

この解決方法については「ガラス強度の検討」へ

引抜力に対する安全設計

キトラは、引抜力によるガラスの脱落を防ぐために、アルミ枠の形状・内部構造に特許を取得した技術的な工夫が施されています。

キトラの枠材まわりは、強化合わせガラス、アルミ内枠、アルミ外枠、EPDM スプリング、シール(現場施工)で構成されています。
ガラスとアルミ内枠は特殊接着材で一体化、内枠と外枠は突起部分で勘合、さらにそれらをEPDM スプリングで適度に押さえています(※下記参照)。
それからガラスと外枠の隙間には、ウェザーシーラント(図中:シール)を打設して水の浸入を防ぐとともに、EPDM スプリング材とガラスが抜け落ちるのを防ぐ役割も果たしています。
このようにキトラは、勘合形状、EPDM スプリング、シールによる3 重の対策により、風圧力による引抜力に対しても、ガラスが枠材から抜け落ちない仕組みになっています。

EPDM スプリングの押さえる力を適度にすることで、ガラスはアルミ枠内部で回転することができます。また、先端部のDPG 支持材についても、ガラスのたわみに対して回転できる構造となっています。これにより、風圧力を受けたガラスのたわみ量を小さく(=発生応力を小さく)することができ、割れにくい安全な構造になっています。

ガラス強度の検討

風圧力が作用したときにガラスに生じるたわみ量や応力は、ガラスが平らで且つ一般的な支持方法(四辺支持や二辺支持)であれば、比較的簡単に計算することが可能です。しかし、キトラのように、強化ガラスに開けた穴に金物を通して支持する方法(DPG 構法)では、穴まわりに応力が集中することから、前述の方法では計算することができません。そこで弊社では、FEM(Finite Element Method、有限要素法)によるコンピュータシミュレーションを用いて実際の製品を用いた荷重試験を実施し、ガラス構成を強化合わせガラス(TP5+PVB+TP5)に決定しました。

EEM 解析の様子

発生応力の最大値は、穴周りで30.94N/m m2。これは強化ガラスの許容応力79N/m m2以下であるので安全であると判断できます。

  • 全体コンター図(応力分布)

  • 穴まわりのコンター図(応力分布)

荷重試験の様子

FEM 解析は非常に強力で便利な手法ですが、モデリング(メッシュ設定、荷重や拘束条件等)により、得られる結果にばらつきが出ることがあります。これを防ぐために、弊社では、解析値と荷重試験による実測値との比較を行い、シミュレーションモデルの正当性を確認しています。

  • 載荷の状態(全荷重180kg)

    荷重試験(全荷重180kg)

  • 応力センサーにて測定

    支持点まわりの応力センサー

おわりに

今回は、キトラ開発の技術レポートから風圧力に関する検討内容について抜粋してご紹介しました。その開発においては、風圧力の他にも、地震や積雪、日射といった外的要因の影響についても同様の安全性検討をしております。それらの内容については、また別途ご紹介したいと考えております。